Second † Adventure
僕はいつも退屈だ____チク、タク、チク、タク
単調で規則的な、たえまなく続く音。
じっと耳を傾けていれば、蕩ける様に意識が眠気にかすんでいく音。
部屋の振り子時計の音だけが部屋に響いている。
ああ___とぼんやり眠りと目覚めの中間、宙に浮いたような状態で思う。
というか僕は既に眠っているのだろう。
眠りながら振り子時計の音を聴いているのかもしれない。
わからない。
わからないけれど、決められたレールをただひたすら単調に行き来する音は、僕にはいかにも似合っているような気がした。
変わらない日常を繰り返し、ただ本を読んでいるだけの自分。
退屈な毎日に軽くうんざりしているのに、そこから外れるのも___怖い。
外れるような理由もない。
これまでずっと惰性のままに要領よく「上品な貴族」をこなしてきた、多分これからもそうしていくのだろう。
そんな自分自身に_____退屈していた。
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青年の名はアルフォンス。
サンドリアの北部に屋敷を構える名家の嫡男である。
今日も彼は一人でこっそりと屋敷を抜け出し、サンドリアの港のはずれにある桟橋に向かう。
大事そうに抱えていた鞄を開くとそこには古ぼけた竪琴が入っていた。
そして彼は優しい指遣いで、そっと静かに竪琴を奏でて歌いだすのであった。
___目を閉じて 初めて見えるものがあること
__いつの間にか 忘れてた
__繰り返す毎日 振り返る思い出だけが
__今では 確かなもの
__ずっと 朝をまって
__ずっと 夢をみてる
__きっと 朝がくれば
__きっと 明日になれば
この歌には題名はない。
だけどそれでよかった。
___パチパチパチ。
拍手の音で一気に現実に呼び戻される。
「いい唄じゃねぇか、それにいい声をしてるぜ。サンドリアに住んでて聴いた中じゃ一番だよアンタ」
「………誰?」
周りを見渡すと桟橋で釣りをしているガルカが一人いるだけだった。
「そんな…僕は唄を人に聴かせる勇気もないし、これは僕だけの趣味なんだ」
「そうだろうな、その唄はアンタ自身に向けた唄なんだろ?」
「えっ!?」
今更気づかされたというか、僕は驚いていた。
「おいおい、今まで歌ってて何も感じないのかい?こいつはたまげた、アッハハハハ」
そのガルカは僕の肩を叩いて笑い出す。
「おおっと笑っちゃいけねぇとこだったな、正直鳥肌が立つくらいだったんだぜ?アンタの唄はよ」
「僕はアンタという名前じゃない…そういう君こそ名も名乗らずに失礼じゃないか!」
自分でもびっくりするぐらい大声で叫んでいた、照れていたのかもしれない。
「おおっとそれは失礼。俺はアゼル、しがない木工職人さ」
「僕は…アルフォンス…」
「ふーん、どっかで聞いたことあるような名前だなぁ。身なりもいいし、アンタ貴族だろ」
「そんなのどうだっていいだろ…」
「ながったるい名前だから、アル。これでいこう」
「なんだよそれ、勝手に納得するなよ!」
「気に入らなきゃメガネ君と呼ぶぞ?アル、オマエさんには選択肢なんてこれっぽっちもないのさアハハ」
「好き勝手言いやがって…くそっ、今日はなんて日だ…」
「坊ちゃん、どうやら爺やがお迎えのようだぜ?」
アゼルが親指で後ろの方を指す。
そこには慌てるエルヴァーンの執事らしき男が視界に入った。
「なんてことだ、僕は失礼させてもらうよ、アゼル今日見たことは内緒にしてくれると助かる」
「いいか、その声と唄はきっとアルの役にきっと立つ、それだけは忘れないでくれ。それじゃな」
それ以上はアゼルは何も言わずに釣りに戻った。
僕も爺やに見つからないように屋敷へと戻ることにした。
もづく(゜д゜)
by edith_workaholic | 2007-02-22 23:38 | ff11